物置

雑多に、備忘録として

【人生の実績解除】柳家喬太郎師匠の公演を観る(配信編)

高校の芸術鑑賞会で初めて落語を見たとき、(思ったほどじゃないなぁ)と正直ピンと来なかった。すごく有名なテレビにもたくさん出ている落語家が来校したにもかかわらず、しかもそれを最前列で見たにもかかわらずだ。だから、落語はわたしにとってあまりおもしろいコンテンツではないと勝手に思い続けていた。

それから10年ほど経って急に落語の「時蕎麦」ってどんな話だったっけ?と思いYouTubeを徘徊し、見つけた動画。

これが、柳家喬太郎師匠との出会いだった。

 

メジャーな古典落語は落語家によって雰囲気ががらりと変わるのだと、YouTubeを徘徊し気づいた。同じ話でも身振り手振り、声色など全く違う。自分の好みに合う・合わないの差が激しい。全く落語のことがわからないわたしでも名前の知っている落語家の動画もたくさん見た。でもどうもしっくりこなくて、そんな時に喬太郎師匠に出会ったのだった。

 

わたしが見た喬太郎師匠の時蕎麦はおもしろいのだが、本題もさることながら話のまくらがとにかくおもしろい(ファンの間では「コロッケ蕎麦」と呼ばれているらしい)。

まくらは、立ち食い蕎麦屋の話からそのメニューのコロッケ蕎麦が良いという話になり、コロッケ達が「揚げられたねー」「揚げられたねー」などとおしゃべりしている場面になってゆく。擬人化されたコロッケ達は各々理想の食べられ方を想像してキャッキャしており可愛らしい。が、まさか蕎麦に乗せられ食べられるとは思ってもいない……、なんて具合だ。その展開や話し方に勢いがありすぎて何度も見て何度も笑った。数日間はずっとこの動画を見て笑って眠る日々だった仕事中も思い出してにやいやした。マスクをしててよかったと思う。まさかこんなに落語がおもしろいとは。いつか寄席に行ってみたい、そして柳家喬太郎師匠の独演会に行きたいと漠然と思っていた。

 

そして2023年6月10日、たまたまチケットぴあを見ていたら「文春落語オンライン 柳家喬太郎独演会」が配信されることを開演1時間前に知り、勢いで配信チケットを購入。リアルタイム視聴した。配信チケットが1500円って安くないですかね……?1週間アーカイブ付きで。でも手軽にポンッと見れる金額でありがたかった。本当に本当に、ありがとうございます。

 

喬太郎師匠は話のまくらが本当にすごい。コロッケ蕎麦でなんとなく察してはいたのだが、ぐいぐいと引き込まれる。いつの間にか落語の演目に入っているのだから、現代から一気にタイムスリップしたような気分だ。

一席目は「猫九」という古典落語。はじめて聞いた。猫のようにおとなしい「猫九」と呼ばれる男が血相を変えて怒鳴り刀を持って家を出た。そのところを見たお隣の奥さんが驚いて旦那にその話をする、という導入。

お奉行の言葉を真似しようと慣れない堅苦しい口調で話すのを妻に一蹴される様は、現代の夫婦にも通ずるものがある気がする。結婚したことないので分からないけど。

江戸っ子口調?べらんめぇ口調?がすごく心地良い。おもしろ時代劇を観ているような気持ちになって好きだった。情景を想起させる演技がものすごい。軽快な語りでテンポ良く話が進むので、ずっと画面に釘付けだった。

 

二席目の新作落語「純情日記渋谷編」の演技ったら。この上ない大笑いをした。百面相のごとくコロコロと表情と声音が変わってコミカルな演技をする師匠に、息継ぎする間も無く終始笑いっぱなしだった。師匠の表情筋は一体どうなっているんだ?ガチムチ表情筋なのだろうか。

新社会人カップルが遠距離恋愛になるが故に別れ話をし、最後に渋谷をデートする話なのだが、

「スペインの香りがしないスペイン坂」

「どっちがA館B館かわからない西武百貨店

など、東京に住んでいればあるある(なのかもしれない)ネタがたくさん出てくる。ローカルだけどなんか笑える。まくらで再開発が進む東京から昭和の東京の話があり、そこからの「純情日記渋谷編」だったので、さっきまくらで聞いた内容がちょろちょろと現れるたびに、(伏線だったのか……)と感心していた。いろんなものに毒づくところが師匠の持ち味だなぁと思って楽しんだ。

 

そうこうしているうちにあっという間に時間が来てしまっていて、幻か?と思った。

喬太郎師匠が東北に来るときはぜひとも足を運びたいし、ほかにもいろんな落語家の公演にも行ってみたい気持ちになった。寄席、とか。浅草に行けばやっているのだろうか……?