わたしは、終業時間の21時になるのを今か今かと待っていた。
2024年4月30日、平沢進+会人 HYBRID PHONON 2566+(追加公演)の初日である。こんな大事な日でも仕事に行かねばならない。
とっくにライブ自体は終わっているものの配信アーカイブ付きチケットを購入済なので、家でゆっくりそのアーカイブを観ようと思っていたのだった。
退勤してすぐさま家路に着き、帰宅後インターネットの情報を一切見ずアーカイブを再生する。画面に映し出されたのは、あの日(2023年9月17日)になし得なかった本来の姿での公演だった。フロアはオールスタンディングで、観客は掛け声を上げ、腕を突き上げ振っている。ああ、わたしもこの場に立ちたかった……。体力が無さすぎるのと他者との距離が近い空間が苦手になってしまったがゆえにスタンディングライブはこのところ避けているが、やはりうらやましい。
ところで、会人謎設定に「三進四退」というものが付け加えられたっぽいですが、なんなんじゃい。
それから、MCにて新しいギターのお披露目で心なしか嬉しそうなヒラサワを見て、「あんたやっぱりギター大好きじゃん!!!」と口に出してしまった。やっぱりファンやめらんねえや……。
以下、ゴールデンウイークの仕事中脳内リフレインしてニヤついてしまった曲や演出の感想。
BIIIG EYE
縦長のスクリーンに「叫ぶ」と表示。シャウトは良い。気持ちをはちゃめちゃに盛り上げる。ちょいトラブってた?様子もあったが、ライブにトラブルはつきものなのでそれも含めて楽しめた。サビの「I'M SCREAMING IN THE LENS」が気持ちいい。
ロケット
個人的にサプライズ要素が強い選曲の1つ。
コーラスの厚みがエグい。2斤のパンをそのままハニートーストにしました!くらいエグい。自分でも何言っているかわからないが、そんな厚みを感じた。
崇めよ我はTVなり
……黒ミサか???教祖こと平沢進とその幹部として会人。フロアは信者たちが熱狂していて、新手の新興宗教の様相を呈している。よく平沢進のライブの様子を見た外野が「宗教みたい」という感想を漏らしがちだが、ファンやってるわたしからしても「宗教みたいだな」と思います、マジで。
客席に指差してゆーっくりと動く姿、「オマエタチを見ているぞ、すべからく見ているぞ」と視線も動く。何人たりとも逃れることはできない。
ビストロン
美しい、ただただ美しい。ステージが青に染まり、この世の事象に対する諦念としかし希望を捨てきれないような歌声が会場中に響いている。わたしはこの空間をビン詰めにしたい。瓶詰めにしてカバンに忍ばせたい。真っ暗なカバンの中でそっと青く輝いて欲しい。そう思った。
ライブDVD「LIVE VISTORON」買うか〜〜。
FGG
初日で来ると思わなかった曲。演出は夕焼け色だよなと思ったらやっぱり夕焼け色だった。
гипноза (Gipnoza)
サビの「ヴォッ ヴォッ」のところを現地で腕振りたかった……。悔やむべきところはそれだけです……。
Anther day
シメに相応しい明るくエネルギーに満ちた曲だと思う。
サビでフロアが腕をブンブン振っていて大変満足だった。わたしもアーカイブを観ながらひとり腕を振っていた。
QUIT
アンコール曲。今生の別れのような喪失感を覚える。なぜだろう。
ヒラサワも年だ。己の引き際、なんてものを考えていてもおかしくはないし、死ぬまで現役続行してくれるとファンとしては嬉しいけれど、無理はしてほしくない。ライブとしては本来の姿でできた最高のものというか、完全体と言った方が良いような内容・演出で大変満足度が高かったけど、再びこのようなライブを見ることができるだろうか。ちょっと寂しい気がする。いや、一ファンの悲観的な妄想であるから、杞憂で終わるとは思うが。
曲はブラス隊の力強いパートになって、曲の終わりが、ひいてはライブの終わりが目の前なんだと認識する。ヒラサワはスッ、と後ろを向きステージを後に、会人たちは「白く巨大で」の手の振りのように鍵を閉める動作をする。途端に照明は落とされ、「今日は幕引き、またこんど」と言わんとしているようだった。
「今生の別れのような気がしてしまった」などと書きながら「またこんど」と感じているのだから、わたしはまたヒラサワを、会人を、彼らのライブを目撃する予感がしているのではないか。その日を今か今かと待つ。いつまでも待つ。次は会場で目撃するのだ。
さて、わたしは腹を決めたんだ。
太陽系亜種音の再販はいつかな????