ゆとりある物置

この世の覚え書きとして

読み終わったぜ「バッタを倒すぜ アフリカで」

発売してすぐ購入して少しずつ読んでいたら、こんなに時間がかかってしまった。なんなら読み終わったの8月なんだけど、ノロノロ感想書いてたらもうじきクリスマスだよ。

 

本の帯をよくよく見ると、

「現実を舞台にした異世界転生ストーリー」

とあって、前野先生はモーリタニアという異世界でバッタ研究されておられるのだなぁ(?)と不思議と納得してしまった。国が変われば文化も変わる。降り立てば即、異世界転生。

 

これは己の無知を承知で書くのだが、わたしは前作の「バッタを倒しにアフリカへ」を読む前はこの世全ての生き物についてある程度研究が進んでいて、大学や研究機関に勤める「先生」と呼ばれる人に聞けばどんなこともわかっている状態なのだと思っていた。分からないことはほとんどない状態だと、そう信じて疑わなかった。

でも実際はそんなことなくて、バッタの研究自体はまだ100年そこそこの歴史しかないことを知る。しかも、ひと口にバッタといえど前野先生が研究されているサバクトビバッタやみんな知ってるトノサマバッタ、なんて知らないバッタも数多く種類があるものだからそれらの種類全ての研究など100年じゃ無理だヨォ!と大変驚いた。先生でも知らないことってたくさんあるんだ。世界っておもしろいね。

 

 

フィールドワークは体力勝負

野外での観察や研究、はたまた解剖までこなす体力よ、並大抵のことではない。フィールドワークは尋常じゃない精神力も持ち合わせてのなせる技だろうと恐れおののいた。

わたしは知らないモーリタニアという地。日中は灼熱というのだから、とんでもないことだろう。観察、解剖をやってのけるその体力に、精神力に脱帽。研究者というのは机の前に座っていれば良いのだと思っていた(偏見)。完璧に覆された瞬間だ。特に前野先生のようなフィールドワークが主な研究者には必要な要素なのだろう。

そもそも、生物学者でもフィールドワークが主な人、研究室が主な人で分かれるんだなぁと思った。研究する動物やテーマによるんだろうが、大きく研究スタイルが変わるものとは知らなかった。

 

追加シナリオ:モロッコ編、フランス編

前作には無かった追加シナリオがある。モロッコ編とフランス編だ。

ロッコ編もフランス編もどちらも刺激的で読んでて本当におもしろかった。やっぱり異国で食べ物の話になるとわくわくする。タジン鍋いいなぁとか、みんなでパーティ楽しそうだなぁとか。

 

音速の貴公子、ティジャニ

前作を読んで大変お気に入りの登場人物がいる。何を隠そう、ティジャニだ。ティジャニは前野先生のモーリタニアでの専属ドライバー兼料理人で、なんでも器用にこなす出来る男だ。なんでも器用にこなすがパーフェクトマンではなく、少しおっちょこちょいというか抜けているところがあり、なんだか女性の心をくすぐる魅力がある。実際語られるエピソードの数々に心くすぐられた。ティジャニを魅力的に感じる部分はこれかもしれない。

ティジャニのことしか書いていない章も用意されており、本文にもティジャニは(やっぱり!)人気とあって、ティジャニは人を惹きつける魅力の持ち主だなぁと惚れ惚れとした。ティジャニ素敵エピソードもティジャニやらかしエピソードも魅力満載だった。また、前野先生とティジャニの信頼関係の強さを伺える。ティジャニファン大満足の章だった。

 

 

600ページという大ボリュームで学術的な内容はもちろん、異国滞在記としても大満足な一冊だった。可能であれば前作「バッタを倒しにアフリカへ」を読んでから本作を読んでほしいが、これから読んでも大満足な、むしろお腹いっぱいな一冊だ。全人類に読んでほしい。