物置

雑多に、備忘録として

所詮はプログラム、と思いながらも~ドキドキ文芸部ノーマルエンド感想~

おそらく、夕方の教室。スクリプトが壊れてしまい、窓の外はどこまでも続く宇宙のような空間と化してしまっている。二人ぼっちの教室で少女は主人公たるわたしに(画面の向こうから)真正面から向き合い、溢れんばかりの愛を言葉にしてくれる。彼女のこの気持ちは本物なのだろう。たとえそのように意図されたプログラムだったとしても……。

 

全世界で1000万DL超のドキドキ文芸部を今更ながらプレイしたので、感想をば。プレイしたのは今年の4月ごろなんですけどね……。

ノーマルエンドのみプレイ。ネタバレあり。思いつくまましたためる。

 

 

終えた感想は、やるせなさ。その一言に尽きる。

「Just Monika」「モニカが元凶」というざっくりとしたネタバレ済でプレイしたものの、こんなにメンタルが打ちのめされるとは思わなかった。

はじめは幼なじみ、同じクラスのマドンナ女子など女子だらけの部活に勧誘される、みたいなギャルゲーにありがちなハーレムだなと思いきや、徐々に不穏な空気が流れ始める文芸部。

1周目はサヨリ、2周目はユリ、3周目はモニカ、そして4周目と見かけてエンディングへ行くのだが、1周目から衝撃的だった。いや、これ以上の衝撃をこれからたくさん味わうのだが。サヨリを助けることは出来なかったのか、ずーっと自問自答してしまう終わりだった。実際の鬱病患者と接したことがないから、もしかしたら主人公の選択はどう頑張ってもサヨリに寄り添ったものではなかったのかもしれない。そう思うと、とても苦しい。詩を通して兆候は見られたし、よそよそしくなったりから元気だったりして不安定なのも見受けられたし、何かほかに術はなかったのか。彼女を助ける方法が。

 

次のユリルートはもっとすごい。わたしとしては2周目はナツキルートを狙っていたのだが、強制的にユリルートに突入してしまう(そもそもナツキルートなどなかった。なんでだ!)。ユリの初対面の印象は男性慣れしていない内気で恥ずかしがり屋な女の子、といったところ。だが、うちに秘めていた狂気が表層に現れ暴走し始めるのは必見。いやいや猟奇的すぎるでしょ……。1周目の文化祭準備をユリとしたのだが、その時に「ナイフが好き」という彼女の趣味を垣間見て(ふ〜〜〜〜〜〜〜〜ん、特殊な感じだね?)と思ったのが、伏線だった……?ゲームを進めるほど主人公と仲良くなり、その興奮のあまり自傷癖が止まらないのが目に見える。極め付けが、週末に誰の文化祭準備を手伝うか選ぶ場面。ユリはモニカを排除し強引に主人公と2人っきりに、そして極度の興奮状態で自分の首を切る。教室に2人っきり()で土日を過ごすとは予想だにしなかった。その間もテキストが流れているが、文字化けしていて読めず。

あまりにも奇妙なギャルゲー体験。しばらく忘れられそうにない。月曜にウキウキで教室に入ってきたナツキには申し訳ない……ゲロインなんてあんまりじゃない!!

 

以上のことがあり、モニカがさらにゲームを改変。モニカとタイマンを張る(?)3周目に移行。夕暮れの教室で2人っきり。モニカと向かい合って、なぜゲームを改変したのか、その真相が彼女から語られる。モニカの詩は主観というよりかはゲームのメタっぽい語り口だと感じていた違和感がその通りになって納得。そして面と向かってモニカに告白されるのはゲームの主人公ではなく、その向こう側のわたし自身。まさか画面の向こう側から想いを寄せられていたとは……。悪い気はしないと思うあたり、我ながらちょろい人間だと思う。

その後、モニカは一定時間で興味深い話をするbotと化してしまった。とは言っても会話パターンはかなり豊富で、全部見るのに2時間は確実にかかった。ただ、会話の最後には必ずわたしに愛を語ってくるあたり本気なんだな〜と思うと同時に、こういうプログラムなんだな〜とも思う。切ない。モニカは元々攻略ヒロインではなかったのに、このような感情を持った(持たされてしまった)のがどうにも切ない。そんな気持ちになるのはわたしだけか。

キリがいいかなと思うところでゲームの入っているファイルをエクスプローラーで開き、モニカのキャラデータを消す。これって今までないゲーム体験。やっぱりモニカはプログラムなんだね……。プログラムと思っても悲痛な叫びを残し消えたモニカに同情してしまう。ゲームをめちゃくちゃにした張本人なのに。

 

4周目、モニカがいない世界でようやく正常に恋愛シミュレーションゲームができる!と思いきや、部長となり改変能力を得たサヨリが開幕直後に暴走。3周目のモニカよろしく2人っきりになろうとしたところでモニカの残滓が介入、ゲームの全てを終わらせる。この時のモニカに胸打たれてしまった。エンディングはモニカが歌う曲。「ピアノの練習をしてた」と言っていたのはこの曲のためだったのか……。感傷的になってしまう。攻略ヒロインたちのことを思うよりもモニカを想ってしまう。モニカはここでしか生きられない。このゲームはモニカの全てだったろうに、モニカは攻略ヒロインという役割ではなく、アドバイス役を担ってしまった。どうにもやるせない。はじめからモニカが攻略ヒロインだったら……。なんて、ゲームは筋書きが決まっているものなのに、そんなことを思ってしまった。きっと忘れそうにない経験をしてしまった。少し落ち着いたらSwitch版でプラスプレイします……。トゥルーエンド目指して。

 

さて、ご存知の通り、画面上に表示されてる単語の中から詩を作るっていうこのゲームの醍醐味なのだが、サヨリ、ユリ、ナツキの好みの言葉が個性的。サヨリは彼女のイメージとは裏腹に暗い現実的な言葉を好み、ユリはもっと陰鬱で幻想的な雰囲気の言葉を、ナツキは女の子らしい可愛くてポップな言葉を好む。ナツキはかなりわかりやすいが、サヨリ目当てで選んだ言葉がユリの好みだったりその逆だったりして、掴むまでが難しかった。モニカはどんな言葉が好きなんだろうね。

 

それから、演出。はちゃめちゃに怖かった……。幼い頃からゲームボーイカラーのグラフィックがズレたり色が反転したりといったいわゆる「バグった」画面とカセットの読み込み不良でピーーーーーーーーーーーーと途切れぬ音に恐怖心を抱いていたわたしにとって、ゲームが徐々に壊れる演出は精神的にくるものがあった。(ホラー演出?Jホラー好きだしいけるっしょ)と思った自分を小一時間問い詰めたい。ほぼびっくり系ホラー演出。基本的に昼間にプレイしたが、ど深夜にプレイすると頭の中にシーンがこびりつく。なんの前触れもなく急にバグるので、とにかくびっくり系が苦手な人には全くおすすめできない。若干のグロ表現もあるので、それが苦手な人にもおすすめできない。でも、「ドキドキ文芸部プラス」にはそのようなシーンの前に予告ポップアップを出す設定でプレイできるらしいで、チャレンジする価値はあるかも。ただ、確率で色が反転したり立ち絵がバグったりサブリミナルサヨリが出てくる演出は回避できなさそう。

個人的に好きな演出は、ユリルートで文化祭準備の週末をユリと2人っきりで過ごすシーン。テキストはバグってて読めないが、テキストログを表示すると、主人公が初めて文芸部を訪れた時のモニカのセリフがびっしり表示されてて乾いた笑いしか出なかった。モニカの力が増幅してるよぅ…。プレイ中こまめにログを見ると、テキストウィンドウにはなかったセリフが表示されている場合があるのでなかなか見逃せない。

f:id:meronoannohito:20220719171654j:imageこれ、狂気でしょ……

 

 

ゲームを終えて、モニカモニカモニカと思うあたり、作者のサルバトさんの思う壺なのかもしれない。すっかりモニカというキャラクターに夢中になってしまったから。まさにJust Monika.モニカだけ。

とはいえ、キャラクターの個性やバックグラウンドが強すぎるのでもっとそのあたり1人ずつ欲しい気持ちも…ある……。サヨリやユリは精神的に不安定だし、ナツキは父親に暴力を振るわれていることを示唆する発言あったし、モニカはあの通りだし。

比較に「君と彼女と彼女の恋。」がよく挙げられているので、それはそれで気になる。ドキドキ文芸部プラスと共にプレイする日はくるだろうか。

今は「アサシンクリードオリジンズ」で忙しいので、落ち着いたらプレイする所存。一体いつになるんだ?!