物置

雑多に、備忘録として

「犬神家の一族(1976年版)」を観た感想

前々から気になっていたが、たまたまYouTubeで2週間限定無料公開とのことで初めて観た。

わたしからしたら古い年代の映画を観ることがないから途中で飽きてやめてしまうかもと思ったのだが、そんなことはなかった。わたしの母が言う「犬神家の一族石坂浩二のやつがいちばんおもしろい」は本当だった。

 

ざっくりとしたあらすじとしては、犬神家を一代で大きく築き上げた犬神佐兵衛の死とその遺言状の内容をきっかけとした遺産相続をめぐる殺人が起こる、みたいな内容。

遺言状の内容は犬神家と血縁のないという野々宮珠世が鍵を握っているのだが、彼女が美人すぎる。美人すぎるし、彼女を中心として殺人が起きる。幸が薄すぎる。

おどろおどろしい人間模様を垣間見れるのもおもしろい。犬神佐兵衛の三姉妹はめちゃくちゃ仲悪そうだし、その子供たちも(佐清以外は)遺産目当てで珠世に近づく最低野郎だし、佐清に至っては果たして本当に佐清なのか顔がケロイドになってて分からんし。やっぱり遺産相続トラブルものはエンタメとして昇華しやすい内容なんだなと己の内で納得した。

 

ストーリーもいいけどキャラも立ってておもしろい。佐清の衝撃もさることながら、なんといっても名探偵金田一耕助。やつはかなりクセが強い。

金田一耕助の、顔立ちは良さそうだけどなんか冴えなくて身なりがちょい汚い書生さんみたいな風貌と、事件において鋭い推理をするくせに対人スキルがちょい欠けてるというかまあまあノンデリカシーな一面を見せるところが良い。これがパリッとしたスーツを着て「帰国子女です」みたいな雰囲気を出されていたら、観てて(なんか鼻につくな……)と感じていたかもしれない。

那須ホテルの女中とのシーンはデリカシーのなさを発揮しすぎている。「作った料理で何がおいしかった?」と聞かれ「生卵」と答えるあたり、推理に頭を持っていかれすぎてあまりにもデリカシーが欠如している。だから、しばしばミステリーものにみられる主人公とメインヒロインの謎ロマンスが金田一耕助自身には起こらない。さっぱりそんな気配はない。あと、見送られるのが苦手という設定も良い。さすらいの私立探偵って感じがする。依頼された地へふらっと来ていつの間にかいなくなって。

総じて(キャラクターとして)好き。実際に関わったらはっ倒したくなりそうだが。

 

上手くまとまらないが、名作と言われる所以がよくわかる映画体験だったと思う。叶うならば、ぜひスクリーンで観てみたいものだ。